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【意外と知らない筋肉痛のホント】「歳をとったから筋肉痛が遅れてくる」、「筋肉痛と筋トレ成果は比例する」は大きな勘違だった

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筋肉痛の原理

筋トレを科学する (洋泉社MOOK)
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年齢と筋肉痛が現れる早さは比例しない

「年をとったから筋肉痛が2日、3日後に来るんだよ。若い奴はすぐに筋肉痛がきていいよな」
このような会話が全国津々浦々で繰り広げられています。
しかしこれは大きな誤解であり、筋肉痛は年齢によって発現が早い遅いに差異はありません。
ではなぜ筋肉痛が発現する早さは人によって違うのでしょうか。
これを知るためには筋肉痛の種類と筋肉の動きの種類を知る必要があります。

筋肉痛には2種類ある

筋肉痛(muscular pain、muscle ache)には、「即(原)発性筋肉痛」と「遅発性筋肉痛」の2種類があります。
「即発性筋肉痛(Acute onset muscle soreness)」とは、激しい運動で焼けるような痛みや無酸素運動で発生する乳酸の蓄積が原因で、運動最中や直後から現れます。痛みが引くまでに4〜6時間程度かかります。また広義には打撲や肉離れなども含む場合もあります。

「遅発性筋肉痛 (Delayed Onset Muscle Soreness = DOMS) 」が一般的に言われる筋肉痛で、運動後8〜24時間後に発生し24〜48時間に痛みのピークがきます。DOMSには硬さ、柔軟性低下、筋力低下、そして痛みが特徴です。痛みは主観的で個人の感じ方、伝え方で大きく変わってきますが、主な痛みとして動いたときに感じる運動痛と圧迫されたときの圧痛です。DOMSのもう一つの特徴として何もしていないときには痛みは感じません。

3種類の筋収縮

運動様式の筋収縮は以下の3種類があります。


◯等尺性収縮(アイソメトリック: isometric contraction)
→→筋肉が伸び縮みしない状態での運動 
 胸の前で手を押し合う、空気椅子などの動作

◯等張性収縮
・短縮性収縮(コンセントリック:concentric contraction)
→→筋肉が縮むことによる運動 
 腕立て・スクワットで腕・脚を伸ばし体を持ち上げる、階段・山をのぼるなどの動作

・伸張性収縮(エキセントリック:eccentric contraction)
→→筋肉が伸びることによる運動 
 腕立て・スクワットで腕・脚を曲げる、階段・山を降りる動作

◯等速性収縮(アイソキネティック:isokinetic contraction)
一定速度での筋の収縮

筋肉痛を起こしやすい動作は伸張性収縮(エキセントリック)です。主に下ろす動作、階段や山を下る動作でネガティブワークともいいます。
反対に上げる動作は短縮性収縮運動(コンセントリック)となります。

DOMS(痛み)のメカニズムについては未だ解明されていませんが、最も有力な説は「筋繊維と周りの組織が損傷し、それが回復する際に炎症を起こし発痛物質を発生させ筋膜を刺激する」という説です。エキセントリックでは速筋が優先的に動員されるため、高伸張ストレスで筋損傷が発生するため、筋肉痛になりやすいという説が現在は有力です。

「筋肉痛の発現の早さは年齢と相関する」という報告はほとんどありません。
筋肉痛の発現は年齢差ではなく個人差の影響が大きく、運動の強度や種類、筋肉の種類の影響があります。運動習慣がある場合、高強度で運動ができるため筋繊維の損傷が大きく修復する過程で多くの発痛物質が発生するというわけです。

筋トレの成果と筋肉痛の発現も関係ありません。
あくまでも種目や習慣、筋肉の質でDOMS発現が変わってくるのであって決してトレーニング成果やトレーニング負荷の強弱の指針にはなりません。

DOMS予防、早く取り除く方法とは

筋肉痛が強いと日常生活にも支障が出てしまいます。立ち上がるときや階段の登り降りなどで辛酸をなめた経験は誰にでも一度や二度はあるでしょう。
当然競技のパフォーマンスやトレーニングにも影響が出てきてしまいます。誰もが筋肉痛予防、早期回復を願っています。

筋肉痛の予防や早期回復のため運動後にストレッチを行う人は多いですが、近年はストレッチと筋肉痛予防や回復には効果がないと言われています。
アイシングやマッサージ、電気療法、鍼灸、抗炎症剤などいずれも顕著な効果がなかったという報告もあります。

筋肉痛軽減にもっとも有効なのが、繰り返し運動効果(Repeated Bout Effect:RBE)です。
DOMSが発現した運動をしばらく後、同じ運動をしたときDOMSの発現が軽減したという報告が多くあります。理由はまだはっきりと解明されていませんが、同じ運動をした際、速筋ばかり使っていたのが遅筋も使えるように体が適応しているためという説が有力です。

DOMSを予防、早期回復の有効な手立ては残念ながらありません。

まとめ

Tarzan (ターザン) 2012年 11/22号 [雑誌]
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加齢のせいでDOMDSの発現が遅くなるわけではなく、またDOMSの予防、早期回復の有効な手段はありません。
高齢でも運動強度や種類、運動習慣等で筋肉痛の発現は変わってきます。

DOMSだけでなく疲労も同じように、アイシングやストレッチなど含めこれをやれば即疲労回復というものはありません。
DOMS誘引運動後、ハムストリングにストレッチを行いその後の筋疲労を調べた結果、安静に横になっていた場合とでは有意な差はなかったという報告もあります。


筋疲労回復処置としてのストレッチン グの効果を検討する目的で,短時間激運動後に安静 臥位,軽運動,ストレッチングを実施した際の筋柔 軟性,血中乳酸値,作業能力( によって得られる値),アンケートを指標に研究を 行った.そして,激運動後の筋疲労回復に対してス トレッチングは全ての指標において安静臥位とあま り差がなく,効果的でない傾向を示し,運動後の筋 疲労の速やかな回復という観点では,一般的に認識 されているストレッチングの効果を否定する結果と なった.
引用:ストレッチングの筋疲労回復に関する研究

DOMSと呼ばれる筋肉痛を予防・早期回復する手立てもない、疲労回復のための有効な手段もない。
そうなってしまうと運動好きやトレーニー、アスリートはどうすればいいのでしょうか。

筋肉の疲れは筋グリコーゲンの低下があるので炭水化物をしっかり摂り、また筋合成にはタンパク質が重要です。まずは十分な糖質摂取が重要で近年では筋トレのあとにはプロテイン摂取を優先と同じくらい糖質摂取も重要と言われています。

しっかり栄養を摂り、十分な睡眠を確保する。これこそが疲労回復にはもっとも効果的なのです。
過去の常識が現代の非常識となることもありますが、過去からの王道の方法が結局現代でも王道だということも決して少なくありません。
何にでも新しいものに飛びつけばいいわけではありません。

食事を蔑ろにしサプリメントばかりに飛びついたり、話題の「筋膜はがし」には興味津々なのに良質な睡眠を確保するのには無頓着など本末転倒にならないよう心がけましょう。

参照:遅発性筋肉痛および運動誘発性筋損傷研究における 予防・対処法に関する文献的知見

参照:DOMS 発現時に行う伸張性収縮運動が 次の DOMS に与える影響

参照:運動クラブ所属学生の疲労度について: 夏季合宿時における疲労

リカバリー ─アスリートの疲労回復のために─
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