【少年を大人に、大人を少年に】楕円道、それは「No side精神」、「One for All精神」、「ラグビー愛」

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Number(ナンバー)特別増刊 桜の凱歌。 エディージャパンW杯戦記[雑誌] Number
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ラグビーの魅力とは

2019年、ラグビーワールドカップが日本にやってきます。
初のアジア地区開催であり、ラグビーマイナー国での開催となります。

また2020年、東京オリンピックではリオオリンピックから正式種目となったラグビー7人制も行われ、ラグビー好きにとっては「4年に一度じゃない、一生に一度だ!!」という気分の高揚が収まらない日々となっています。

ラグビー人気は2015年ラグビーワールドカップでの大躍進、五郎丸歩というスーパースターの出現で大盛り上がりとなり、ラグビー認知度は一気に高まりました。

しかしその盛り上がりもたちどころに消えてしまいました。
新たなファンを獲得しようという気が全く感じられないずさんなマーケティング、日本ラグビー協会の古い体質による改革心の無さなど様々な要因でせっかく盛り上がった千載一遇のチャンスをみすみす逃してしまいました。

国内ラグビー最高峰のトップリーグの宣伝も自虐的なアピールをするしか手がありません。
いい出来ではあるのですが。

ラグビー人気がない理由をあげればもうキリがありません。
1970年初頭から1990年頃までは、日本スポーツ界を牽引していたのはサッカーではなくラグビーでした。
しかしいつまでも内輪の伝統校大学ラグビーの人気の上に胡座をかいたラグビー界は、低迷していたサッカーが立ち上げ見事成功させたJリーグに、その背さえ見えないほど引き離されてしまいました。

未だに古い体質のラグビー協会、外部からの人材登用の鈍さと遅れ、伝統校優先の試合日程、観客動員や選手雇用、企業業績に左右される選手やチーム等の悪い面での企業依存体質などラグビー界の足かせは数え切れません。

日本ラグビーを大躍進させた立役者の一人でもある前監督エディー・ジョーンズの退任理由に、日本協会の体質の古さ、伝統校優先等の日本ラグビー界の改革の鈍さなどがあるとも言われました。
エディー・ジョーンズは古い体質の日本ラグビー界を創造的破壊ができる唯一無二の人間でしたが、日本は手放してしまいました。
エディー・ジョーンズHC退任へ 日本ラグビー界に不信感募らせた?

そして2015ワールドカップ後、一気に加熱した人気は長続きせず、以前と同じ風前の灯火となってしまいました。
今日本ラグビー界に若干風が吹き始めていると思っているのはラグビー関係者だけです。


足が遠のいたラグビーファンが日本でのワールドカップ開催に向け若干戻り、関係者が頑張ってチケットをさばきいているに過ぎません。
これでは日本ラグビーワールドカップが終わった後、悲惨な状態に陥るかもしれません。

サッカーJリーグを盛り立てバスケットボールBリーグ立ち上げにも尽力した川淵三郎氏のような手腕の持ち主がラグビー界には必要ですが、同じ人材がさまざまな役職をぐるぐる回っているだけの日本ラグビー界では難しいのかもしれません。
だからこそ必要なのですが…。

さて、ここまでさんざん日本ラグビー界を糞味噌にこき下ろしてきましたが、ラグビーという競技の素晴らしさは筆舌に尽くしがたいものです。
圧倒的なフィジカルの中にある紳士性やラグビー精神、そして荒々しく見える競技性ながらも大多数による高度なコミュニケーションと、単純と複雑が混ざり合わさった競技性は多くの人を惹き付けます。

その素晴らしさの一端を是非紹介させてください。

圧倒的なフィジカルモンスター

走ってぶつかって倒れての繰り返しであるラグビー。
それも80分間も。
相撲の立会い、レスリングのタックル、柔道の投技や受け身、ハンドボールやバスケのようなパスさばき、サッカーのようなキック、野球のようなハイボールのキャッチ、短中長距離走の繰り返し。
これら全てが組み合わさったのがラグビーです。

コリジョン(衝突)スポーツであるラグビーでは、まず体重が重いことが有利になります。
ボクシングや柔道、レスリングなどの体重別競技は体重差による有利不利を解消していますが、ラグビーや相撲のような競技では体重が大きな武器になります。
しかしラグビーは80分間走り続けなければならず、重い体重は不利になってしまいます。
そのため、徹底したウェイトトレーニングで除脂肪体重を増やし、脂肪は減らし、パワーも強く走り続けるスタミナもある強靭なフィジカルモンスターでなくてはなりません。

ベンチプレスは体重の1.5倍、スクワット、デッドリフトは体重の2倍、懸垂は体重×0.5の負荷、1km走は3分30〜50秒以下、10m走は1.7秒以下。
これがトップ選手の目標基準です。
ちなみに体重は80kg後半〜100kg近くがもっともボリュームが多い選手層だと感じます。
その巨体から繰り出される圧倒的なパワーと、無尽蔵のスタミナ、爆発的なスピード。
そんなフィジカルモンスターたちがぶつかりあう様は圧巻です。

人と人が全力では走ってぶつかりあう音、衝撃はまるで交通事故です。
もっとも激しい球技であり、もっとも長い格闘技、まさに闘球なのです。

チケットが安い

日本ラグビーでは、大学ラグビーがもっとも人気で集客力があります。
しかしそれは関係者で盛り上がっている部分も無きにしもあらずです。

国内で最高峰のリーグは、社会人ラグビーのトップリーグです。

ラグビーは比較的安く観戦できます。
トップリーグは自由席で当日券2000円、前売り1800円で、他競技とそこまで大差はありません。
しかしペアチケットなら3000円で一人1500円になります。
さらにラグビーの試合は同会場で連続して2試合行われることも多々あり、入れ替え制ではないので1枚のチケットで2試合も観れてしまうのです。
ペアチケットで2試合だと、1試合750円換算になり、破格の値段になります。

また頻繁に行われる練習試合は無料で、しかもスタジアムより間近で観戦でき、ファンサービスもあるのでおすすめです。
ラグビー観戦初心者ほど、目の前で繰り広げられる肉弾戦を五感全てで感じられる練習試合から観に行ってもいいかもしれません。

One for All, All for One

ラグビーを知らない人でも聞いたことがある有名な言葉、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」。
ラグビーのオフェンスでは、ボールを前にパスできないため自分の体でもってボールを前進させなければいけません。
仲間が体を張って繋いがボールを粗末にするということは仲間への裏切り行為です。

またラグビーはボールを持っている選手がもっとも前にいます。
その仲間が孤立しないように仲間で全員でフォローします。
これが「ALL for One精神」です。

ディフェンスではどんな大きな相手でも、どんな速い相手でも基本は一人一殺です。
体格差やフィジカル差がある場合、仲間がサポートして二人でタックル(ダブルタックル)することがありますが一人一殺は大原則です。
相手にビビった結果タックルをミスすれば、体を張って止め続けた仲間への裏切りとなってしまいます。

ラグビーは横一列でディフェンスライン(ワンライン)を引き、壁のように一斉に前に出て守るのが基本です。
一人でも欠けるとワンラインに穴があいて、ディフェンスを突破されやすくなってしまいます。
痛がって転げ回っている暇などありません。
しかしラグビー選手が痛がっている場合は骨折や靭帯損傷、みぞおちへの衝撃で呼吸困難など本当に痛い場合です。
立ち上がった選手には観客席から敵味方関係なく拍手が沸き起こります。
ラグビー選手が痛がっている場合は本当に痛みに耐えていると観客は知っているのです。

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ボールにはフィールドに立つ全ての仲間、応援、サポートしてくれた人全ての想いが乗っています。
立ち向かう勇気と仲間のサポートこそが、「One for All, All for One精神」なのです。

No side

これは日本ラグビーの言葉で、海外のラグビー選手に言っても通じません。
試合終了のことをラグビーではノーサイドと言い、お互いのサイドがなくなるということです。
これを日本では敵味方の陣地がなくなるから発展(勘違い)させ、敵味方なくなり仲間になると意味付けしました。
ラグビーでは伝統的に試合終了後、正装で立食パーティーをするのアフターマッチファンクションを行うのが慣例です。
ラグビーに初めて触れた日本人が、試合終了合図の「No side」を、戦った相手と打ち解けて仲間になるという誤解が今の「No side精神」に繋がっているのです。
どれだけ激しく痛い試合あったとしても試合が終われば即仲間、同士となり酒を酌み交わすのもラグビーの大きな魅力の一つです。

少年をいち早く大人に、大人を少年に

ラグビーのフランス代表ピエールが言った有名な言葉です。

「ラグビーは少年をいち早く大人にし、大人に永遠の少年の魂を抱かせる」
Le rugby permet aux enfants de jouer comme des grands et aux
adultes de redevenir des enfants. 
ラグビー・フランス代表元主将、ジャン・ピエール・リーブ(Jean-Pierre Rives)

一つのフィールドに立つ選手がもっとも多い競技であるラグビー。
そして前にボールを投げられない、つまり仲間は常に後ろにいます。
ボールを持った人間が一番先頭で、様々なコミュニケーションをとらないとボールは繋がりません。
この仲間とのコミュニケーションや「No side精神」や「One for All精神」が少年をいち早く大人にさせます。

相手と取っ組み合いボールを奪い合う行為は大人を無邪気な少年に戻します。
ボールを手に持って走る、それを体をぶつけて奪い合うというシンプルな競技性は、少年も大人も無我夢中にさせる魅力があるのです。

紳士がやる競技

togetter:【イギリス】ラグビーの観客の姿勢が素敵すぎる。フットボールとは何が違うのか。
ラグビーの競技性はとても激しく、だからこそプレーヤーは紳士でなければいけません。
当然試合中はむき出しの闘争心で戦うので、他競技同様ときにはラフプレーや乱闘も起きてしまいます。
しかし危険な競技だからこそ、競技中はもちろんのこと競技以外もとことん紳士でフェアであるべきなのです。
相手を敬い、レフリーを敬い、仲間とサポートしてくれる人に感謝をするのがラグビー精神です。

観客も同じです。
本来は応援チームによって客席は分けません。
敵味方関係なくいいプレーや痛みに耐え立ち上がった選手には盛大な拍手を、タックルを躊躇したり痛い振りをしているような選手には敵味方関係なくブーイングが湧きます。
当然入場時に相手チームにブーイングなどありえず、むしろ拍手です。
これから応援するチームと好試合を繰り広げてくれるリスペクトすべき相手なのだから当然です。
強豪、ライバルであるからこそ対戦相手を敬います。

相手が集中しないといけないプレー時はブーイングも騒ぎもせず静かに見守るのが礼儀です。
一時のラグビーブームの際、静かにすべき時にブーイングが起こり論争が起こったこともありました。
結局は試合時にモニターにこういうときは静かにしてくださいと表示されるようになりました。

プレーヤーも観客も紳士でなければならないのです。
ブーイングや無用な痛がりアピールなど紳士らしからぬ行為はすべからくタブーなのです。

こういったラグビー精神が多くの国で、ラグビーに教育的な意義を持たせています。
サッカーが大人気の欧州の国でも子供にやらせたい競技はラグビーと答える人が増えてきているという記事もありました。

ラグビーは種類が豊富

種類が豊富というのはポジションも豊富、ラグビーの種類も豊富ということです。
ポジションが豊富というのは体重の重い人、高身長の人、小さい人、軽い人、速い人、長い距離が得意な人、長い距離を走るのは得意ではないが相撲のような立会は得意、球技が得意な人、格闘技的な要素が好きな人など様々な要素の人が活躍できるポジションがそれぞれにある競技です。

ラグビーの種類というのは以下の様なものがあります。
・15人制ラグビー
・7人制ラグビー
・ビーチフット(ビーチラグビー)
・タグラグビー
・リーグラグビー(密集をなくしたラグビー。日本でメジャーなのはユニオンラグビーと呼ぶ)
・ウィルチェアーラグビー(パラリンピック種目で車椅子でのラグビー)

タックルのないラグビー、砂浜でやるラグビー、ごちゃごちゃしないラグビーなど様々な種類のラグビーがあり、実は誰でもラグビーはできるのです。
タグラグビーは腰に紐をつけて取るのをタックル代わりとし、幼児や小学生も体育の授業で行ったりします。

ビーチフットは、その名の通り砂浜で行うラグビーです。

多種多様な顔を持つラグビーは老若男女、健常者、障害者も行える懐深い生涯スポーツなのです。

まとめ

どの競技にも素晴らしい部分は大いにあり教育的意義や生涯スポーツとしての可能性などさまざまなポジティブな要素を持っています。
ラグビーには武道的な礼節、「No side精神」や「One for All精神」などの教育的意義、タグラグビーなどの生涯スポーツの要素、そして世界三大スポーツとしての15人制ラグビー、オリンピック種目となった7人制ラグビー、パラリンピック種目であるウィルチェアーラグビーなどラグビーの可能性はまだまだ広がっていくはずです。

2019年にラグビーワールドカップが日本にやってきます。

津波や地震で大きな被害を受けたラグビーの町、岩手の釜石や熊本でもラグビーワールドカップの試合が行われます。
ラグビーワールドカップが盛り上がれば被災地も元気になります。

最強のフィジカルモンスターたちがフィールドで暴れる姿は圧巻です。
4年に一度のラグビーワールドカップ。
しかし日本で開催されるのはきっとこの一度だけ。

4年に一度じゃない、一生に一度だ!

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画像引用:ラグビーワールドカップ2019

問いかけ続けるー世界最強のオールブラックスが受け継いできた15の行動規範ー
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