【因果関係と相関関係とスポーツの世界と】「筋トレで競技向上」、「朝食で成績上がる」の構造は「溺死者増でニコラス・ケイジ映画出演数増」、「海賊減ると地球温暖化」と同じだった

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それは因果関係?それとも相関関係?

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法
「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

朝ごはんを食べると成績が上がる?

巷では下記のようなことがよく言われますが、信じていますか。

・朝ごはんを食べると成績が上がる
・朝ごはんを食べない子は切れやすい
・facebookの友だちが多いと就活が成功しやすい
・ジャンクフードばかり食べている子供は凶悪犯罪を起こしやすい

この手の言説はスポーツの世界にもよくあります。

・ストレッチをすると準備体操になる、怪我が減る、疲労回復する
・筋トレをすると競技が上手くなる
・筋トレをすると重くなり、身体も固くなり、使えない身体になる
・ラダーをやると俊敏性があがる
・乳酸は疲労の原因
・プロテインを飲むと筋肉が大きくなる

一見相関関係があると因果関係があると思いがちです。
では下記の場合はどうでしょうか。

・アイスが売れると溺死者が増える
・ニコラス・ケイジの映画出演数が増えるとプールで溺れる人が増える
・灯油の販売量が増えると脳卒中が増える
・海賊が減ると地球温暖化が進む
・コウノトリが増えると出生率が上がる

明らかに胡散臭さくなるはずです。
しかしこれは、「朝ごはんを食べると成績が上がる」、「プロテインを飲むと筋肥大する」と同じなのです。
因果関係があると思ってしまう人も多いはず。

因果関係と相関関係を理解していないと思わぬ説に騙されてしまうので要注意です。

因果関係とは

因果関係とは、2つ以上のものが「原因と結果」の関係にあることです。
Aの原因で、Bという結果になる。
これは逆転せず、時間、場所、環境が変わっても同じ原因によって同じ結果が生じます。

・太陽が昇ると明るくなる
・太陽が沈むと暗くなる
・スイッチを押すと部屋が電気がつく
・ご飯を食べるとお腹いっぱいになる

因果関係を間違えてしまう(誤謬)原因として以下のものがあります。

・因果関係の逆転
暑いからエアコンが売れるわけで、エアコンが売れるから暑くなるわけではない

・第3の要因が2つの共通原因(≒擬似相関:一見因果関係があるように見えるが、見えない要因によってあたかも因果関係があるように見えてしまうこと。)
アイスクリームが売れると溺死者が増えるのは、「暑い」からであり、2つの原因は「暑さ」。溺死者数とアイスクリーム販売数はなんの因果もない

・偶然の一致
「アイスクリーム消費が増えると殺人事件が増える、」「海賊が減ると温暖化が進む」これらはただの偶然で因果関係はない

・前後即因果の誤謬
(Aが起こった後にすぐにBが起こると、Bの結果はAが原因だと考えてしまう)
祈ったから治った、祈ったから雨が降った、祈ったから方策だった、赤いパンツを履いていたから勝った

これも因果関係?

以下の文を読んでみて下さい。

・犯罪者の90%以上は白米を習慣として食べていた
・白米を食べていた半数近くは試験での点数が平均点以下だった
・犯罪者の半数近くは白米を食べてから24時間以内に犯罪を犯した
・80%以上の犯罪者は1週間以内に白米を食べていた
・白米を常習的に食べる人に、一週間白米を食べるのを禁止したら、禁断症状に似た状態が起こった
・白米を食べる人の致死率は100%!

これは仮定ですが、事実とそう遠くないはずです。
水やパンに変えても同じことが言えます。
だからといって米やパン、水の摂取量を規制しようという話は出ません。
米やパン、水が原因ではないことは誰でもわかります。
ではこれをジャンクフードに変えられたらどうでしょうか。
きっと多くの人がそこに因果関係があると思ってしまうでしょう。
「朝ごはんと成績やキレやすさには深い関わりがあった!」と雑誌で取り上げられれば多くのお母さんたちは信じるに違いありません。

朝ごはんを食べる子が頭がいいのは、朝ごはんそのものに原因があるのか。
朝ごはんを食べない家庭環境こそが、子供の成績に関係があるのではないでしょうか。
朝ごはんを食べない子がキレやすいのは寝る時間が遅い、慢性的睡眠不足、生活の乱れ、家庭環境の悪さが原因なのではないでしょうか。
朝ごはんを抜くことが「成績」や「キレやすさ」と相関はあるかもしれませんが、原因と言はえません。

スポーツの世界でもある因果関係ゴチャゴチャ事例

ではスポーツの世界ではどうでしょうか。
プロテインを飲むと筋肉がつく、筋トレ後にプロテインを飲まないと筋肉がつかないなどよく聞きくはずです。
ではプロテインと筋肥大に因果関係が成立するでしょうか。
プロテインを飲んだだけで筋肉がつくでしょうか。
そう思っている人は、アナボリックステロイドと勘違いしている可能性があります。
プロテインはただのタンパク質で、三大栄養素であり身体の構成に欠かせない栄養素です。

筋肥大のためには筋肉に適切な刺激、負荷をかけ継続的に行い、バランス良い栄養摂取、適切なカロリー摂取、休息睡眠が重要です。
「プロテイン=筋肥大」という図式は成り立ちません。
因果関係があるということは、いつ誰がどんな状態でどんな環境でも、ただプロテインだけ飲んで筋肥大するということです。
1日で必要タンパク質量が摂れていれば筋肥大には問題ないとも言われています。
それくらいの緩い相関関係です。

筋肥大を一番促すのは筋トレのボリュームだと言われています。
単純な比較として、「100kg×5回を3セット=1500kg」より、「80kg×8回を3セット=1920kg」のほうが筋肥大しやすいということです。
筋肥大に重要なのは適切な負荷の筋トレとボリュームで、これがもっとも強固な相関関係で有力な因果関係です。

ではプロテインが無駄かというとそういうわけではありません。
外出先やトレーニング後の素早い栄養摂取、食事だけではまかないきれないタンパク質の補助、就寝前のタンパク質摂取など必要な場面は多々あるので有効活用しましょう。
ホエイプロテイン 3kg 無添加 ナチュラル
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乳酸が疲労物質とされていたのも、間違った因果関係でした。
さまざまな実験で疲れると乳酸が高くなったので、「疲労=乳酸」となっていましたが、乳酸は疲労を回復させるためのもので乳酸がたまるから疲れるのではなく、疲れにたいして乳酸が回復させる役目を担っていたのです。
新版 乳酸を活かしたスポーツトレーニング (KSスポーツ医科学書)
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「筋トレ=競技力向上」も因果関係はありません。
競技の練習をするから競技が上手くなるのです。

ベンチプレス150kg挙げても、それだけでバッティングが上手くなったり打球が伸びることはありません。
スクワット200kg挙げたからと言って、それだけで100m走が速くなったり、長距離走が速くなったり、ジャンプ力が向上することもありません。

筋肉の専門家であるボディビルダーの筋肉が使えないのではなく、彼らは特定の競技練習をしていないので、アームレスラー選手には勝てませんし、短距離走も、格闘技も、ウェイトリフティングもその道の人には敵いません。
ボディビルダーの筋肉が使えないと言う人は因果関係を完全に履き違えています。
筋肥大がそのまま競技力向上の因果関係にはならないのです。

ラダートレーニングでアジリティアップの相関はあるでしょうか。
言えることは、ラダーの練習をしたら上手くなるのはラダーの技術です。
ステップを切って相手をかわす、初速を上げる、相手の動きに素早く反応するなどは、それ自体の練習をしてこそ上手くなります。
ラダーでそのような直接の競技力向上とはなりません。
ラダー能力=即競技力向上とはなりません。

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擬似相関が都市伝説を作り上げる

擬似相関(相関があり一見原因と結果の因果関係があるとみえがちだが実際は全くお互い関係がないこと)も多くあります。
そういった類がスポーツ界の都市伝説となるのです。

・筋トレ=身体が固くなる、スピードが落ちる、使えない筋肉、競技力向上
・ストレッチ=準備体操、クールダウン、疲労回復
・プロテイン=筋肉増強
・筋肉痛=トレーニングの成果
・加齢=筋肉痛が遅い

これらに因果関係はありません。
相関関係すらもあるかどうか怪しいものもあります。

では因果関係があるかどのように判断すればいいのか。
下記はいくつかある判断基準のうちの一つです。

下記は疫学での因果関係の判定基準です。

1.Strength <強固な関連> 2.Consistency <一致した関連> 3.Temporality <時間的な関係> 4.biologic gradient / dose-response relationship<生物学的傾きのある関係/量反応関係> 5.Coherence <整合性のある関連> 6.biological plausibility <もっともらしい関連、蓋然性> 7.Specificity <特異的な関連> 8.Experiment <実験的な証拠の存在> 9.Analogy <類似の関連の存在>
引用:疫学の基本

大雑把に言うと、
「必ず原因の後に結果が生じ、関連が強く、Aを増やせばBは増え、Aを減らせばBは減り、場所・環境・時期が違っても全てのサンプルで再現性がある」
ということになります。

まとめ

因果関係には密接な相関関係は必要ですが、それは必要条件であって十分条件ではありません。
相関関係と因果関係をごちゃ混ぜにしてしまうと、都市伝説を信じてしまう危険性があります。
また多数の異なる原因が一つの影響を引き起こすこともあるので、原因が一つだけでないこともあります。
スポーツ界では、むしろ原因が一つのほうが少ないはずです。

筋肉痛や疲労の原因などまだ解明されていないことは多くあります。
また競技力向上と言っても、そこにたどり着くまでの道のりは百人百様です。
相関関係と因果関係をごちゃ混ぜにしては、上がるものも上がりません。

「筋トレで競技力向上」ではなく、「筋トレで筋肥大」、そして筋肥大を競技にどう繋げていくか、そのためのトレーニングとは、という因果関係を探っていかなくてはいけません。
因果関係がはっきり分かるものは稀です。
ただそこは常に頭の片隅に入れておかなくてはいけません。

フィットネス・ダイエット業界には擬似相関が蔓延り、フィットネスリテラシーの低い人たちを食い物にします。
何百万円もする広告枠で、さんざん商品PRをした挙句、最後一瞬だけ小さい文字で「個人談だから性能・効果を保証するものではありません」と打消し表示広告を出すのです。
一体何をPRしていた広告なのでしょうか。

ダイエットと因果関係があるのは、「消費カロリー > 摂取カロリー」です。
それ以外の多くは擬似相関です。

しっかり相関関係と因果関係を見極めるトレーニングを積みましょう。
統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門 (ブルーバックス)
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統計データはおもしろい! -相関図でわかる経済・文化・世相・社会情勢のウラ側-
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参照:togetter 相関関係と因果関係をごっちゃにしないために
参照:togetter 「外で友達と遊ぶ子ほど高学歴・高収入」という独法の調査に対する批判
参照:Wikipedia 擬似相関
参照:相関関係と因果関係

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