「日本の運動・スポーツ界は猫も杓子も長時間ランニング好き」のなぜ

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長時間ランニングが好きな日本人

良いトレーニング、無駄なトレーニング 科学が教える新常識
良いトレーニング、無駄なトレーニング 科学が教える新常識

ウォーミングアップもクールダウンも体力強化も全てランニング

日本は長い間、スポーツ科学とはかけ離れ、気合、根性などの精神論で長時間費やし修行のごとく運動をしていました。
「水は飲むな」「柔よく剛を制すだから、余計な筋肉はいらない」「体力は最も重要だからまずはひたすら走れ」などです。

無駄に長時間走る習慣も筋トレ不要論も未だにスポーツ界に根強く残っています。
マラソン選手を目指すわけでもないのに、とにかく長い時間走ることが全てに通じると思っている節があります。
準備運動にも、心肺機能向上にも、足腰強化にも。

ウォーミングアップでのジョギングは身体を温め筋肉がほぐれ動きやすくなったり、クールダウンでは軽運動は血流を良くし、疲労物質を散らす効果があると言われます。
しかし心肺機能や足腰強化という名目で、ただただマラソンのように走らせるのは果たして効果があるのでしょうか。
確かに強化できる面もありますが、サッカーや野球で求められる心肺機能はそれぞれ違い、競技で求められる足腰の強さもそれぞれ変わってきます。

それなにも関わらず、体力・足腰強化には「マラソン」という認識がどこまでもあり、それは義務教育の児童の体力強化にも当てはまります。

ダッシュとジョグの繰り返し運動(間欠運動)であるサッカーやラグビー、ラクロス、バスケットなどの競技でも、体力強化という錦の旗のもとマラソンの如く走らせるのはナンセンスです。
短距離選手がマラソンの練習はしません。その逆も然りです。

前ラグビー日本代表監督エディー・ジョーンズは次のような発言をしています。


「高いレベルでパフォーマンスする指導ができていない。規律を守らせるため、従順にさせるためだけに練習をしている。それでは勝てない」と、日本ラグビー界の問題を指摘した。エディーHCは陸上選手を引き合いに出し、「足の速い選手に中距離選手の練習をさせたら、彼のスピードは失われます。ウサイン・ボルトはマラソンランナーのような練習はしません」

引用:【サンスポ】エディーHC、日本ラグビー界に辛口エール「規律を守らせ、従順にさせる練習をしている」

ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング
ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング

またダルビッシュ有選手も自身のtwitterで次のような発言をしています。

日本での運動・スポーツ界、果ては児童の体育にまでマラソン選手を育成するかのような走り込みをさせます。
一体なぜこのように猫も杓子も、一様にマラソンのような走り込みをするのでしょうか。

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富国強兵の「身体教育」とマラソン

日本の義務教育の体育には、身体を動かす楽しみや喜びを実感させることに重きが置かれていません。
遊びや楽しみの中で体力向上や動作習得させるというより、教師の指導の下、受け身で競技や動作の習得、体力向上が目的です。

日本では富国強兵主義、軍事力強化策を学校に求め学校教育の「身体教育(後の体育)」のなかで規律や統制、忍耐など教え込むようになります。
身体教育とは楽しみながら動きの中で子供の発達を促す場ではなく、肉体・精神の鍛錬として構築されたものなのです。

義務教育の体育が軍国主義を基に今でも行われているわけではありません。
しかしそういったも側面が今も残っています。
運動会では、何度も何度も行進や組体操、応援の練習をし統制されたマスゲームの披露します。
運動会は楽しむというより、訓練された成果を披露するというニュアンスが色濃く出ます。
親も訓練され統制された様子が子の成長の証だと感動するのです。

運動を楽しむかという概念が日本人はとても希薄です。
義務教育での体育で運動を受け身でひたすらさせられ、できる子はどんどんでき、できない子はいつまもできず、その圧倒的な差の中で競わせるためできる子はより好きに、できない子はより嫌いになっていくのです。

そんな中で、体力向上となると走らせるという手段しか持ち合わせていない体育で、走るのが好きではない多くの子供はさらに体育が嫌いになり、体力をつけるということは、ひたすら耐えないといけないという概念が植え込まれてしまいます。
そしてこの植え付けられた概念がさまざまなところに飛び火し、「体力向上= マラソンのような走り込み」が常套手段になってしまうのです。

運動嫌いの大部分の人は、おそらく学校での体育が好きではなかったはずです。
運動が嫌いというより体育が嫌いなのです。

富国強兵が前提だった「身体教育」の名残がいまだ色濃くでている体育。
自ら運動することを楽しめない国民性は、小学校の頃から植え込まれているのかもしれません。
参照:「体育」概念の形成過程について

長距離走ることが全てのスポーツに通じる体力強化だと信じている

とにかく長い時間走られせることこそが体力強化(心肺機能向上)だと思い込んでいいる人は少なくありません。
それは長時間練習にも、また最近様々な問題が報じられている働き方にも通じ、とにかく「長い時間」費やすことが大事で一つの評価軸になり、そこに生産性は全く関係ありません。

一昔前まではほとんどの部活の強豪チーム、プロフェッショナルのアスリートやチームでも、何時間も何時間も長時間練習するのが正義という風潮があり、そして今でも一部に根強く残っています。

例えば最近ではHIIT(高強度インターバルトレーニング)やタバタ式トレーニングなど短時間でも心肺機能を向上させるトレーニングが注目され始めました。
以前からインターバルトレーニングはアスリートの中では行われていましたが、雑誌等で取り上げられる回数が増え、一般人にも普及し始めました。
しかしそれはまだまだごく一部です。

いまだ体力向上には何十分、何時間も走らないといけないと思っている人が大半です。
そして忙しくてそんなまとまった時間は取れないとなってしまうのです。
また長い時間走るのが好きではない人にとっては、「とりあえずの運動 = ジョギング」がこの上なく苦痛になってしまうのです。

スポーツ科学はどんどんアップデートされていくにも関わらず、いまだに指導者や競技者本人も昔ながらの悪しき習慣にとらわれがちです。
そしてマラソンのような走り込みが体力向上の万能薬として蔓延してしまうのです。
運動前の準備運動としての静的ストレッチや筋トレ不要論なども同じです。

まとめ

スポーツ科学の教科書――強くなる・うまくなる近道 (岩波ジュニア新書)
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スポーツ科学・医学はまだまだ未知な部分が多くあります。
筋肉痛も疲労の原因もいまだ明確に解明されていません。

一昔前まで正しかったことが、一転することは珍しくありません。
筋肥大も、低負荷高回数ではしないと言われていましたが、限界まで追い込めば筋肥大することがわかっています。
【常識にひれ伏すな!】筋肥大には「高負荷×低回数」という定説が覆された?「低負荷×高回数」にも有効な筋肥大効果あり!は事実か?

100%これが絶対に正しいというトレーニングはありません。
その人の身体の特性や競技によって正しいトレーニングというのは変わってきます。

ただし明らかに間違いというものも多く解明されているので、常にアンテナを張り自分のトレーニングをアップデートしていくことが大切です。
一つの方法や理論に固執しない柔軟性もトレーニングには大切です。

せっかくやるトレーニングや運動。
少しでも効率的、効果的に、いい成績・戦績が出せるよう、トレーニング知識をアップデートし続けましょう。

「体力向上 = マラソンのような走り込み」という植え付けられた概念を打ち破り、長時間走ることでなにが向上し、それが自分の体や競技にどう貢献するのか考えましょう。
心肺機能を高める方法はたくさんあるなか、なぜマラソンのような走り込みが必要なのか、本当に必要なのか、最善の手段なのか、インターバルトレーニングより効果的なのか、インターバルトレーニングよりなにがメリットで、なにがデメリットなのか。

そろそろ盲目的にマラソンのような走り込みをするのはやめませんか?
それはたとえあなたがフルマラソン完走を目指していてもです。

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