日本スポーツ界にばっこする「武士道精神主義の弊害」とラグビー日本代表前監督エディー・ジョーンズが断行した「マインドセット改革」

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日本人のマインドセットを変える

ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」 (講談社+α新書)
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最弱だったラグビー日本代表を再建した男

ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話 (Sports Graphic Number Books)
ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話 (Sports Graphic Number Books)

ラグビー界では知らない人はいない、智将エディー・ジョーンズ。
2015年ラグビーワールドカップで世界最強の南アフリカ「スプリングボクス」から歴史的勝利を収めたラグビー日本代表。
過去1勝しかしたことのないラグビー最弱国の日本は24年ぶりの勝利を世界最強のスプリングボクスから勝利し、「W杯史上最も衝撃的な結果」、「スポーツ史上最大の番狂わせ」と世界中から大絶賛を受けました。

エディー・ジョーンズは、2003年母国のオーストラリアをヘッドコーチとして指導し準優勝に、2007年にはチームアドバイザーとして南アフリカを優勝に導いた名将です。
その後日本の社会人クラブチームサントリーサンゴリアス、日本代表を経て、2015年12月からワールドカップ開催国で初めて予選敗退するなど低迷していたラグビー発祥の地であるイングランド代表の監督に就任しました。就任早々北半球最強国を決める「シックス・ネーションズ」で13年ぶりのグランドスラム(全勝優勝)を達成するのです。

世界の先頭を走るエディー・ジョーンズは日本ラグビー界やスポーツ界にさまざまな提言をしています。ガラパゴス日本が古い悪しき伝統を打開し成長するにはエディーの言葉をしっかりと吸収しなければなりません。彼の言葉はラグビー界へのアドバイスだけにとどまらず日本のスポーツ界、ひいては一般の運動愛好者にも通じる提言なのです。

日本のスポーツ界に蔓延る病理

日本スポーツ界にはさまざまな病理が蔓延っています。武士道的精神主義の弊害、筋トレ不要論、無駄な長時間練習、無用の長時間走りこみ。一昔前までは運動中の水分補給も禁止されていたスポーツ後進国日本は未だに古びた悪しき伝統が脈々と受け継がれているです。

スポーツだけに限らない話ですが、日本特有の「見て覚えろ、体で覚えろ、技術は盗め」など指導者側の指導力不足を競技者の能力や努力不足に転換することが多い日本。大リーグやラグビー大国ニュージーランドなどそれぞれの競技の先進国ではトップレベルの選手も基本スキルを丁寧に教わり、欠かさず練習します。アスリートの意識の問題ではなく、ベーシックスキルをどの年代、どのレベルになっても事細かに指導するシステムなのです。

しかし日本は武士道的精神主義をアスリートの世界に色濃く醸し出します。その弊害の一つに上意下達があります。トップダウン型の指導方法です。トップダウン型の指導は日本特有のものでは決してありませんが、日本の場合はこのトップダウン型指導に古い精神論・根性論が加わり独自のトップダウン型になっています。これは指導者だけでなく先輩後輩の間にも存在し、上から言われたことはたとえ理不尽でも我慢し、しごきに耐えることが美徳という風土と精神性を持っているのが特徴です。この病理は、学生の部活だけの問題ではなくトップアスリート界や伝統競技である相撲、武道などにもいまだに根強く残っています。

さらに無駄な長時間練習やマラソン選手を目指すような無用な走り込みなども日本スポーツ界にとって弊害しかありません。精神論や右向け右の集団で一括して物事を進める日本の体質が色濃く日本スポーツ界にとってデメリットのほうが大きいのが事実です。また日本には筋トレに対して大きな誤解や偏見、無理解が広く強く深く蔓延っています。世界と対等に戦えない一つの、そして大きな原因にこの筋トレ不要論の蔓延があります。筋肉をつけると重くなる、遅くなる、硬くなる、パフォーマンスが落ちる、筋トレでつけた筋肉は使えない、ボディビルダーの筋肉は見せ掛けなどスポーツ生理学を無視した論調がまかりとっているのです。

詳しくは次の記事に書いてあるので参照ください。【筋トレガラパゴス列島】未だ筋トレ不要論はびこる日本 超一流はベンチプレス100kg当たり前「クリスチャン・ロナウド」「ウサイン・ボルト」「ロジャー・フェデラー」世界の中田英寿だって軽々ベンチプレス100kg

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マインドセットを変え「Can’t do」を「Can do」へ

エディー・ジョーンズが日本代表の監督に就任してから一貫して言い続けた言葉。それは「日本代表のマインドセットを変える」ということでした。

「マインドセット」とは、経験や教育、その時代の空気、生まれ持った性質などから形成されるものの見方や考え方を指す言葉です。信念や心構え、価値観、判断基準、あるいは暗黙の了解や無意識の思い込み、陥りやすい思考回路といったものもこれに含まれます。

出典:日本の人事部

エディー・ジョーンズは「日本には『Can’t do』のカルチャーがある」と言います。体が小さいからフィジカルでは勝てない。(日本ラグビーは)プロじゃないから。農耕民族の精神をもっているからなど多くの「Can’t do」を日本人は主張するとも言っています。

しかしエディージャパンは、フィジカルを徹底的に鍛え、筋肉で体を大幅に大きくし、さらにスピードも増すトレーニングを行い見事成功させました。「柔よく剛を制す」、「日本人はスピードがある、細やかな技術がある」など古くからの日本の伝統では世界には到底敵わないのです。そもそも世界各地で活躍するスポーツ選手のほうが爆発的なスピードも洗練された技術も格上です。

ガラパゴス日本は昔ながらの悪習を打開することなく受け継ぎ、その悪習をなかなか認めずさらには日本の伝統だから変えることができないと「Can’t do」を主張します。公務員の前例がないからできないと全く同じ姿勢です。このマインドセットを変えなければ日本が世界と対等に戦うことはできません。エディーは日本人の悪しきメンタリティの変革を断行したのです。ラグビーに限ったことではなく、柔道や相撲など日本の伝統競技で日本人が勝てなくなっているのは、伝統とこじつけ日本独自の「Can’t do」と「武士道的精神主義の弊害」がたくさんあるからに他なりません。

エディー・ジョーンズからの提言

エディー・ウォーズ (Sports graphic Number books)
エディー・ウォーズ (Sports graphic Number books)

エディーは世界と戦うにはフィットネス&ストレングスを高めよ提言しています。日本人は体が小さいという理由で最初からストレングスでは勝てないと信じこみウェイトトレーニングを蔑ろにし非科学的な筋トレ不要論を主張します。そして容易な技術論や「柔よく剛を制す」論に逃げ込みます。技術、スピードは日本人の強みだといまだに本気で信じている人が現場にはたくさんいます。しかし世界ではユースの世代から本格的なウェイトトレーニングをしています。世界のどのアスリート界を見ても筋肉が多すぎ重そうに動いている選手や可動域が狭く動きがぎこちない選手などいません。

また無駄な長時間練習や無意味な走り込みは排除し科学的なエビデンスある練習をしなさいと言います。スピードが求められるポジションにも関わらずマラソン選手のような練習をさせるのが日本です。スプリンターの練習をしなければいけない大事な時期に、一様にみな同じ走りこみをさせます。もっと個人の特性を早い段階から見出し、長所を伸ばすことが大切だとエディーは言います。これについてはダルビッシュも同じようなことをtwitterで語っています。

さらにエディーは、子供にはテクニックよりスキルを教えることが重要だとアドバイスします。テクニックは正確な技術、スキルは適切な状況判断と区別してます。日本では練習のとき失敗しないように指導し、失敗すれば怒ります。しかしエディーは練習ではたくさん失敗させ、なぜ失敗したのかを自ら考えさせることに寄って状況判断、つまりスキルが向上すると提言しています。

世界を圧巻させたエディー・ジョーンズ。彼の提言はラグビーだけでなく日本のスポーツ界に一石を投じたのです。しごきや我慢、理不尽な上意下達。これらを美徳とする武士道的精神主義が跋扈(ばっこ)する日本スポーツ界。日本アスリートのため、指導者と競技者のため、先輩後輩のため、運動を通しての親子関係のため、自らの肉体改造のため、悪しき伝統は打ち壊し、エビデンス・ベースド・スポーツにしっかり目を向けなければなりません。

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